ヒットコンテンツブログ

吉田就彦のヒット学

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2010年9月アーカイブ

NECが運営するビジネス情報サイト「Wisdom」にて
Wisdomブログ「明日のビジネスを創りたい人へ ビジネスにおけるキャラクター活用」
対談シリーズとして掲載されているインタビュー内容です。
インタビュアーは野澤智行さん、他です。

2.インターネット時代におけるキャラクターヒットコンテンツの変化
1)世界観を楽しむためのサイド&ディープ戦略が重要に

吉田 :キャラクターというのは、実は非常に単純なもの、単純化されたものです。音楽とか映画とかタレントは、非常に複雑ですが、キャラクターは、可愛いなら可愛いだけで、ここに人生を感じる、とかはなかなかいかない。マンガやアニメのように、その後にコンテンツとしての細かい設定やストーリーなどを色々くっつけていかないと、キャラクターは複雑化しません。複雑化させることで、1つの情報をすぐ終わらせない、消費し尽くされないで、長持ちさせることが出来るんです。

「だんご3兄弟」にもそういう複雑化していこうという動きが佐藤さんにはあったけど、それがあまりにもヒットのスピードが速く間に合わなかったり、伝播させられないような物凄い力強いパワーで、「だんご3兄弟」というキャラクターだけが独り歩きしてしまった。あれがもっと、ストーリー性とか他のキャラクターの認知とか、佐藤さんが考えていた世界観を伝える時間があればと。それをやるのが、あのスピードでは出来なかった。

稲葉 :キャプチャーとか載せる前に。

野澤 :「だんご3兄弟」の短いキャッチフレーズとか音楽だけが、日本中でとにかく大量に溢れて、生活者は全部わかった気になっちゃったんでしょうね。やはり強いんですよ、音楽の力は。

【キーワード2-①:ヒット理論~これからのキャラクターマーケティングに欠かせないサイド&ディープ戦略】

吉田 :「だんご3兄弟」も、コンセプトの完成度はさすが佐藤さん凄く高かった。キャラクターマーケティングにおいて必要なのは、キャラクターの瞬発力と、サイドにあるストーリーとかキャラクターを上手くマーケティングしていかなきゃいけない。
『ヒット学─コンテンツ・ビジネスに学ぶ6つのヒット法則』で書いた、コンテンツの世界観をよりディープに楽しみたいという顧客心理に応えるべく、メイキングなどの特典映像を用意したり、ストーリーや設定の中に細かいサイドストーリーを埋め込む、他のメディアや事業領域でサイドコンテンツを展開するなど、商品に幅や深さをもたせるための【ヒット要因2:企画】のキーワード⑦「サイド&ディープ」戦略を、キャラクターマーケティングはより積極的に取るべきだと思う。(下図表参照)


野澤 :確かに。吉田さんもビデオのお仕事で関わったという「踊る大捜査線」とか、サイドコンテンツが充実してましたね。「ワンピース」が長年にわたってヒットし続けているのも、まだ明かされていないサイドストーリーが色々あったりするからだったりしますね。

吉田 :ファンの関心をどんどん深める、どんどん横にも興味喚起していく。僕はそれを水平垂直マーケティングと呼んでいるけど、それをやらないと、キャラクターマーケティングでは大きなヒットは望めない。

野澤 :単にかわいいとかカッコいいだけの、表面上だけのキャラクターだと確かにそう。そういう意味で言うと、例えば「リラックマ」に代表されるような、今流行っているクマ系のキャラクターには、必ずしも深いストーリーがある訳ではない。でも、絶大な人気を維持しているものも多いですよね。ああいうものは?

吉田 :おそらくニーズを物凄く限定的にしたり、「ハローキティ」もそうだと思うんですけど、ある年代の女の子だけにフォーカスを当てて、最初から物凄い絞り込んでいる。流通経路とかも絞り込んで、長くそれを延命しながら使う、という戦略がある。ある意味ランチェスター戦略ですよね。
全体の中でどれだけ絞り込んだり、どれだけ見せる場所を限定したり、あるものを1個出したらなるべく引っ張って、違う展開のものを3年後に何か出すとか、そういう風に時間のタイムマネジメントをやることによって、キャラクターマーケティング次第で、最終的な大輪の花が咲くか、受け取る果実の大きさがどのぐらいかが全然違ってきます。

野澤 :ターゲットや、どこで会える、グッズが買えるなどを絞り込んで、そこに注力できるからヒットする。ディズニーシーの「ダッフィー」もそうですね。あれがどこでもぬいぐるみを買えるようになったら、あっという間に普通のクマになっちゃう。

吉田 :「だんご3兄弟」は、NHKだから他のメディアに思いっきり取り上げられた分、あっという間に消費されちゃったので、その価値がなくなったというよりは薄まって、サイドストーリーを展開する前に売れすぎちゃったという教訓。あれがNHKでなければ。
わかりやすいのは、「およげ!たいやきくん」は、当時24局ネットのフジテレビ、ポンキッキ。525万枚という巨大なマスを、1年間で売った。「だんご3兄弟」は、たった1ヶ月で375万枚で、8倍。だけど525万枚には届かなくて、375万枚だった。当時は僕らにおっかけのテレビ取材が入った。「だんごがたいやきを抜く日」っていう。でもそれは実現しなかった。

稲葉 :メディア環境とか違いますもんね。「およげ!たいやきくん」のブームは、1975年から1976年。その違いは大きいですね。

【キーワード2-②:インターネットの浸透が生んだ、顧客との対話や顧客同士の情報交換によるヒット】

吉田 :僕のメディア論で言うと、Windows95が出る前のアナログ時代のメディアミックスが、「およげ!たいやきくん」。Windows98が出て本格的なインターネット時代になるんだけど、そこでのヒットが「だんご3兄弟」です。
インターネット時代になって、それまで5番目までしかなかったヒットの法則に、6番目の法則「顧客との対話や顧客同士の情報交換がヒットを生む」(下表参照)が追加されて、ヒットのスピードも変われば規模も変わりました。

野澤 :確かに先程の社内イントラ掲示板活用事例なんて、まさにインタラクティブですよね。

吉田 :講演なんかでも、時代の変遷に伴ってヒット理論が変化した話はよくするんですけどね。

<続く>

※この対談は、NECのビジネス情報サイト「Wisdom」のブログ「ビジネスにおけるキャラクター活用」で掲載した内容を、了承の上で再掲載したものです。

NECが運営するビジネス情報サイト「Wisdom」にて
Wisdomブログ「明日のビジネスを創りたい人へ ビジネスにおけるキャラクター活用」
対談シリーズとして掲載されているインタビュー内容です。
インタビュアーは野澤智行さん、他です。

1.ヒットコンテンツの共通法則
3)ヒットコンテンツを手がけて得られた発見 -だんご3兄弟でネットの威力を痛感-(続き)

吉田 :「だんご3兄弟」が1999年1月6日に「おかあさんといっしょ」でオンエアされて少しずつ世の中に広がっている時に、ある民放局の取締役から現場の人たちまでの、5階層ぐらいの人たちと飯を食ったんですよ。取締役、部長、課長、主任、現場みたいな。今後よろしくやりましょう、って感じで。
その最後に「今度、『だんご3兄弟』というのを仕掛けようと思ってるんですけど、ご存知ですか?」と聞いてみたんですが、面白かったのは、取締役は当然知らない、部長、課長も知らない。主任の人が「そうなんですか!」と、狂喜乱舞。現場も全く知らなかった。
つまり、主任という、自分のお子さんが幼稚園に通っている方だけが知っていた。しかも、物凄いことになっているというのを彼だけが知っていて、あとは全員知らない。その時点では、テレビ局社員でさえ、現場も管理職も誰も知らなかったんです。

稲葉 :その場に居合わせた殆どの人たちが、「おかあさんといっしょ」というコンテンツの視聴層じゃなかったんですね。

吉田 :「おかあさんといっしょ」は、幼稚園児・保育園児のバイブルであり、ほぼここしか見ない。異常に閉じられたところの物凄い濃い情報があって、そこはあまりにも濃くて閉じられている故にまわりは知らないから、それが何か、という時に皆知りたがったんです。
そこで、CD化発表の前段に取った僕の作戦なんですが、2月16日だったかの日刊スポーツに、初めて「『だんご3兄弟』CD化」、というスクープを意図的に抜かせました。スポーツ紙だから当然業界紙のようなもので、テレビ局も他のメディアも皆が見る。「『だんご3兄弟』、何だそりゃ?」となる。「『だんご3兄弟』がついにCD化、何じゃそりゃ?」って。

野澤 :CDが出たのは3月3日だから、凄いですよね。直前まで誰も知らない。

吉田 :皆、どの階層も知らない。先ほどの民放局の方々と飯を食ったのは1月31日あたりだったけど、その時には世の中も業界も一部を除いて誰も知らなかった。それで、何じゃこりゃ?ということで、皆が調べまくった。「だんご3兄弟」とは何ぞや?って。
当然、僕らが宣伝のコントロールタワーを握っているから、それで、どうもポニーキャニオンらしい、と問い合わせが来る。ところが気の利いたメディアは、当時流行り始めたインターネットで検索した。検索するのは、当時メインユーザーだった20代~30代前半の男性。テレビ局や編集の現場の人たちは、皆その年代。調べる。ところが当時ブームのはじめのころには、「Yahoo!」では、「だんご3兄弟」は引っかからなかった。

稲葉 :検索できたのは「Infoseek」だけだったんですよね。

吉田 :「Infoseek」はあの当時、唯一ロボット検索だった。「Yahoo!」はディレクトリ検索だから、上ってこない。唯一「Infoseek」だけ引っかかって、ダーっと出てくるけど、「Yahoo!」には載っていない。ナンバーワン「Yahoo!」には載っていないのに、「Infoseek」だけ。これがまた、大きく口コミが広がる原因になったんです。

当時の20代~30代の男は、結婚してもいるんだけどけっこうPCオタクが多かった。その人たちが子供と見るテレビの中の茂森あゆみちゃんのファンになっていたんですよ。「おかあさんといっしょ」の歌のおねえさん。子供と一緒に見るテレビに出ているから、大抵の歌のおねえさんはアイドルオタクのお父さんに物凄い人気ですが、中でも茂森あゆみちゃんは物凄い人気があった(笑)。
アイドルオタクのお父さんはPCを始めてもやることないから、ホームページを作っちゃう。作る時のネタは自分の子供のネタが一番なんだけど、「うちの子供が『だんご3兄弟』で盛り上がってます」みたいな格好のネタになって、ホームページの中に「だんご3兄弟」のサイトがいっぱい出来始めた。

吉田 :佐藤雅彦さんも、ホームページを作ったのは早かったし、当時kinoという映画を公開したばかりで、格好のネタがあった。あの当時、佐藤雅彦さんと「だんご3兄弟」は、凄くニッチな発火点だった。
ニッチな発火点になっていたものを、さっきも言った人たちが検索で引っ掛けて、「『だんご3兄弟』って何ぞや?」と、そういうところから情報を得て。「だんご3兄弟」というのは、こういうことらしい、とやっと知るけど、知らない人はまだ全然知らなかったんです。

もう時効だからいいと思うけど、ポニーキャニオンのサイトで2日間だけ、「だんご3兄弟」をストリーミング配信したことがあります。あのNHKのコンテンツをストリーミング配信するなんていうとんでもないことを、1999年3月に僕たちがやっちゃった。その後、えらい怒られるんだけど(苦笑)。
その時のアクセス数が、当時の「Yahoo!」のトップページのアクセス数の10分の1まで来た。それはすさまじいことで、当然回線パンク。
インターネットと言う新しいメディアが広がってくる時に、情報格差、情報ディバイドが、人の知りたい希求心に火をつけて広がっていった。これが、1ヶ月間で375万枚までいった大ヒットの仕組みです。

野澤 :確かにあの頃はダイヤルアップ回線でネットを繋がなきゃいけなかったし、まだGoogleもなかった。今より情報ディバイドは遥かに大きかったですね。

吉田 :でもわずか11年前のことなんです。
キャラクターの話をすると、佐藤雅彦さんは、「だんご3兄弟」を100年長続きするキャラクターにしたかった。NHKの中で人気シリーズになって細々とやって欲しかったそうですけど、残念ながら僕らの仕掛けがあまりにもまんまといきすぎて、大ヒットして、しまいにはスポーツ紙の表紙にまでなった。これだけの凄い角度でヒットしたから、落っこっちゃうのも早かったんです。
僕はマーケティングディレクターでマーケティングの責任者をやって、思い切り売ってしまって、思い切り売れたけど、すぐに思い切り売れなくなってしまって。佐藤さんとNHKには申し訳ないことをしたけど、それが出来てしまったのは偶然と、僕の仕掛けが本当に絡まっちゃって、入っちゃって、ダーンといっちゃったということ、計算外のことだったんです。

【キーワード1-⑨:大ヒットが併せ持つキャラクターの短命化リスク~「だんご3兄弟」の教訓に学ぶ】

野澤 :よくキャラ物で言われるのが、予想外に短期間でめちゃめちゃ売れすぎちゃうと、すぐに鮮度を失って過去のキャラクター扱いされて終わっちゃう。まるで一発屋のお笑い芸人みたいですが(苦笑)、露出を調節する、という施策の大切さがアンパンマンなどのケースでもよく言われます。
「だんご3兄弟」は、本当に普及期のネットの話とか色んなタイミングが予期せぬことになって大爆発したんですね。

吉田 :CDを売ることによって、「だんご3兄弟」全体のフラッグシップとして、ヒットを作ろうとした。そうすれば、「おかあさんといっしょ」のCDも売れるし、ビデオも売れる、キャラクターグッズ全部が売れる。全体のために「だんご3兄弟」を売ろうとしたけど、あれは売れすぎてしまって、ガーンと売れてしまって、すさまじい数字を残したけど。やっぱり短命に終わってしまった。佐藤さんには、ある意味では申し訳なかった、佐藤さんの意図から外れてしまった。

野澤 :キャラクターグッズの製作が間に合って出始めた頃には、下火になっていた。ネットで一気に話題になって、その後の在庫の山まで話題になってしまうのも怖いと思います。

吉田 :やっぱりネットの力は、伝播の速さ。現状Twitterもそうだけど、伝播の速さの恐ろしさがあるTwitterは、新しい情報が常に重要で、意味のある情報でも少しでも時間が経ったら急激に落ちてくる、ロングテールみたいなカーブ。それは物凄く消費を早くさせちゃう。おそらくキャラクターという、ある種強いエネルギーを発するものって、上手く賞味期限の保持とかキャラクター展開をやらないと、実は打ち上げ花火だけで終わってしまうというリスクは非常に高いし、実際そうならないようにやろうとしてもなかなか難しい。

稲葉 :「だんご3兄弟」のライセンスはどんな形だったんでしょうか?

吉田 :NHKからライセンスを受けたNHKエンタープライズからサブライセンスとして、ポニーキャニオンが売りました。

稲葉 :ヒットが先に来て大嵐になりすぎて、その後のライセンスビジネスがちょっと。100年ということは、本当はそういうことも考えて計画していたけど、計画通りにならなかった、ということですか?

吉田 :CDは1ヶ月で終わっちゃったわけだから、NHKサイドはライセンスビジネスとしていろいろ考えていたのに、その後が大変でした。

稲葉 :大ヒットは記録したけど、良い意味で教訓でしたね。

吉田 :今の時代に本当に考えなきゃいけない教訓。インターネットを使ったことによって、そうなった。今はインターネットのスピードが速くなった。Twitterが出てきて尚更。
ということは、11年前の「だんご3兄弟」の教訓は、今では日常茶飯事。つまり時間の仕掛け、タイムマネジメントの仕掛けをどう上手くやるかによって、せっかくのヒットコンテンツが飽きられて短命で終わってしまうリスクもあるわけです。

吉田 :9月に鳥取大学の石井先生との共著で出す予定の3冊目の本「大ヒットは数式で予測できる(仮)」の中で、ヒットの数理モデルという形で、ヒットの理論を打ち立てています。
具体的には映画の興行収入データとブログ書き込み数との関係を定性・定量で分析することで、ブログによってどれだけ口コミが広がって収束するかを明らかにしているんですが、最近のコンテンツマーケティングとか、ストーリーマーケティングとかで、示唆を与えるものになるのではないかと期待しています。

僕らのこの研究によると、今日、日本の噂話、口コミの一つのネタが終息するのはわずか2日です。人の噂は75日と江戸時代に言われていたのが、今日ではわずか2日。Twitterのようなものがメインの時代になったから、もしかしたらたった1時間かもしれない、半日ももたないくらい。それくらいが、人の噂の伝播の力。これをマーケティングに使っていかないといけなくなるのがこれからの時代ですね。非常に上手く計算し、媒体計画とか色んなことを組み合せないと、おそらく上手くいかない。

<続く>

※この対談は、NECのビジネス情報サイト「Wisdom」のブログ「ビジネスにおけるキャラクター活用」で掲載した内容を、了承の上で再掲載したものです。

LIVE告知!

恒例の「音楽懐古主義」LIVEを、今度の日曜日9月12日に行います。

17:30 OPEN!
18:00~18:30  ビートルズコピーバンド「ヒートルズ」    
18:30~19:25  昭和歌謡ショー「メリット」
19:25~20:20  ソウル&ディスコ「キャホホイ楽団」
20:20~21:20  昔のROCK&POPS「THE LOOSE & BEAT」

例のごとく場所は新中野の「BENTEN」
FEEは¥1800 + ドリンク別途¥500

私は「ヒートルズ」でベース&ヴォーカル、THE LOOSE & BEATではベースを担当。
今回も盛りだくさん。

某テレビ局の出演を振り切りTWIST&SHOUT!!

NECが運営するビジネス情報サイト「Wisdom」にて
Wisdomブログ「明日のビジネスを創りたい人へ ビジネスにおけるキャラクター活用」
対談シリーズとして掲載されているインタビュー内容です。
インタビュアーは野澤智行さん、他です。

1.ヒットコンテンツの共通法則
3)ヒットコンテンツを手がけて得られた発見 -だんご3兄弟でネットの威力を痛感-

【キーワード1-⑧:「だんご3兄弟」誕生秘話~イントラネットに吸い上げられた民の声・声・声】

野澤 :多分、チェッカーズや角川映画とは好対照の話だと思いますが、1999年に大ヒットした「だんご3兄弟」はどうだったんでしょうか? ポニーキャニオンのプロデューサーとして最後に「だんご3兄弟」を手がけられたという話をお聞きしたんですが。

吉田 :「だんご3兄弟」は面白かったですね。ご存知の通り、「バザールでござーる」などオリジナルキャラクターを使った広告で数多くのヒットを生み出してきた佐藤雅彦さんが講談社から『クリック』という短編集を出した時の、わずか2ページぐらいの小さい話が原作になっています。
佐藤さんみたいな、「バザールでござーる」とか「ポリンキー」とか、キャラクターを使った面白いコミカルなCMで有名になった、しかも凄い当てた方と、NHKという全くCMとは関係ないところとで、ミスマッチの異業態コラボレーションがしたいという、NHK側のラブコールから始まったんですね。

吉田 :佐藤さんとNHKが最初に話した時に、『クリック』の中にあった「だんご3兄弟」を歌にしましょうか、というところからあの作品が生まれたそうです。とりあえず佐藤さんのチームが、歌とビジュアルを全部作って、NHKとしても「面白いですね」となってオンエアされました。
オンエアされて、1週間後ぐらいだったか10日後ぐらいだったかに、ポニーキャニオンの社内ネットワーク、イントラネットに、「『だんご3兄弟』がうちの息子の通っている幼稚園で凄いことになっています」というスレッドが立ちました。

稲葉 :ネットがまだ充分に普及してない頃ですよね。

吉田 :当時は、年末ぐらいにポニーキャニオンがやっと、ロータスノーツというイントラネットを初めて導入したタイミングで、社員も皆、イントラを使って何かやってみたいと思ってたんでしょうね。
誰かがスレッドを立てて書き込んだら、その時確か、一つのスレッドに対して23ぐらいフォローがついた。「うちもそうです」、とか「何ですかそれ?」って。これは異常値、普通そんなことはないのにそんな異常値があった、ということで、「『だんご3兄弟』って何だ?」ってなった。

モノ作りは、佐藤さんが作ったものなので、僕らは全然関与していません。しかも僕らは番組の反応を直接見もしていないからわからない。話題になっているようなのでよく調べてみたら、「だんご3兄弟」は「おかあさんといっしょ」の関連作品としてリリースの予定がありました。しかし、あの当時「だんご3兄弟」のCDを出すという発想はどこにもなかったので、「おかあさんといっしょ」というパッケージにちょっと入っているからいいよ、という感じでした。
しかし、あまりにも凄いイントラのスレッドだったので、これは仕掛けないと、となって、NHKに「『だんご3兄弟』のCDを出しましょう!」と言って、イントラネットに書き込まれた情報をプリントアウトして持って行って。今だったらそんなことしちゃいけない時代だけど(苦笑)。それを「こんな凄いことになっています!」と持って行って。「そんなに凄いんですか?」みたいな話で、NHKもびっくりしていて。

野澤 :NHKも反応がまだわからなかったんですね。

吉田 :ポツポツとNHK本体には(問い合わせが)来ていたらしいけど。

稲葉 :でもそれは定性の情報であって、吉田さんが持っていったのは定量の情報ですよね。

吉田 :しかも具体的な事例で、具体的なものがこんなにあった、って。そんなことしているうちに、新聞の投書があったり、NHKに対して「『だんご3兄弟』をオンエアしてくれ!」という要望があったり。そんなことをキャッチしていたので、テレビ番組というコンテンツから音楽を切り出してCDというキャラクター商品にして、それを「だんご3兄弟」というキャラクターのフラッグシップにしようと考えたんです。
「だんご3兄弟」の世界観を世の中に大きくメッセージするためには、CD、しかもヒットというのがわかりやすいんじゃないか、ということで乗り込んで行ったら、佐藤さんもやぶさかじゃないという話になって。でもNHKは過去にやったことがないから「調査します」とおっしゃって、最終的には「出してもいいですよ」となりました。

吉田 :その時の決め手は、普通は幼児物のCDって、アルバムでせいぜいイニシャル(初回販売)が何百枚。おそらく500枚ぐらい。でもそれを、思い切って2桁、1万枚は大丈夫、という風に言って私が口説きました。もう清水の舞台から飛び降りる感じでした。1万枚はやるから、やらせてくれ、と口説いたのです。
後日談になるけど、CDを発売した3月3日、1999年1月6日の初オンエアからわずか2ヵ月後、ついたイニシャル(初回販売)枚数が70万枚。でも70万枚で発売したら即欠品で、その後、CD販売が低迷していることから、おそらくもう破られないであろう欠品記録として、140万枚。70万枚の倍もの欠品が、もう翌日には積み上がったんです。今はCDが売れない時代だから、(この欠品記録は)金輪際破られないと思いますね。

稲葉 :欠品ミリオンですか・・・もうないでしょうね。

吉田 :そのくらい、そこまで売れると思わなかったのが、売れた。あれがヒットした最大の原因は、社内イントラネットを導入したことで吸い上げられた "民の声"。その後、システムの会社などで講演する時は皆それを事例として使っています。
その後デジタルガレージに転職してからは、IT系のシステムにも関わっていたので、僕の話は、クライアントにとって説得力があったようです。とにかくそれがヒットを生んだ第一の要因でした。

マーケティング的なことで言うと、NHKの企画だから全部の民放局が協力してくれる、という利点がありました。民放各局とも、競合他局の企画は積極的に取り上げないけど、NHKでやっているものが上手くいったら、それは一つのニュースとして放送してくれる。当然ながら新聞もそう。NHKがやっているのだから応援しようよ、となる。
なおかつ強力なのは、NHK自体が地上波を2波持っていて、BS2波、ハイビジョン、全国FM地方局、AMラジオと、フルメディアで「だんご3兄弟」をやる。それが、国民の要望によってどんどんオンエアされる。その巨大なメディアジャックをやったのがNHKだったから、物凄い。だからあれだけのスピードで認知が進んでいったんです。

<続く>

※この対談は、NECのビジネス情報サイト「Wisdom」のブログ「ビジネスにおけるキャラクター活用」で掲載した内容を、了承の上で再掲載したものです。

吉田就彦

Authour:
株式会社ヒットコンテンツ研究所
代表取締役 吉田就彦

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