NECが運営するビジネス情報サイト「Wisdom」にて
Wisdomブログ「明日のビジネスを創りたい人へ ビジネスにおけるキャラクター活用」
対談シリーズとして掲載されているインタビュー内容です。
インタビュアーは野澤智行さん、他です。
1.ヒットコンテンツの共通法則
1)ヒットコンテンツを手がけて得られた発見 -チェッカーズのキャラクター戦略-(完結編)
【キーワード1-⑤:ゼロリセットの必要性~過去の成功体験を捨ててこそ、新鮮な驚きはもたらされる】
吉田 :やっぱり普通なものは当たらないですよね。柳の下にどじょう何匹みたいな議論になるけど、エッジの利いたものは、革新的な面白いもの。『ヒット学』で『6つのヒット法則』の法則3に「常に新鮮な驚きがヒットを生む」と書いたのは、常に新鮮な驚きを与えるためには、それまでのものを引きずっていちゃダメ、ということなんです。
野澤 :我々のビジネスでもそうですが、これだけメディア環境や生活者の意識が変わってきた今、過去の成功体験は足を引っ張ったりしかねないです。
吉田 :実際に講演とかではよく言っています。過去の成功体験は、1回ゼロリセットして捨て去らないとダメだと。だけど、人間はついつい捨て去りたくないと思ってしまうんですけどね。
だから、『ヒット学』の『ヒットを生むプロデューサーの7つの能力』(下図参照)の七つ目として、「完結力(完結させる能力)」がプロデューサーには必要だと書いているんです。完結というのは、きちんと結果も出して形にするけど、それを完全にゼロリセットして、その時のノウハウだけをちゃんと次に生かすということで、関係を引きずらないということです。
吉田 :全く新しいものからスタートする。だから、(上記の)図ではそれぞれの能力がサイクルとしてぐるぐる回っている形にしています。
稲葉 :そこら辺の勇気は必要ですよね。このパターンで上手くいったからまたいけるんじゃないか、というのはキャラクターやアニメコンテンツの世界でも結構あるような気がする。
野澤 :極端な話、「次も同じようなのお願いします」と頼まれちゃったりもします(苦笑)。
吉田 :いろんな物作りで成功した人の話を聞いたり、本を読んだりしていると、皆さんそう言っているから、ゼロリセットすることが必要なのは真実なんですよ。
野澤 :一度成功したから次も同じようなことをやれとスポンサー達から言われても、その通りにやって上手くいかないと、まずいでしょうね、プロデューサーとしては。
吉田 :そういうことがあるので、また大変だけどゼロからやる。その過程の中で、昔の物が無駄になっているかというとそんなことはなくて、ノウハウは蓄積されているので、それを使いながらまた新しいものが生み出せるんです。安易なヒットの大量生産は無理なんです。
稲葉 :次は前より上手くいくんじゃないか、って思ってしまうのは、油断があったり甘さがあったりするんですかね。
吉田 :そうですね。ヒット作りは真剣勝負だから、その時のエネルギーが高い時に、それこそ爆発する訳だから。そのときには使えたけど、その後は使えないことも多いです。チェッカーズと同じようなことを後になって僕もやろうとしたけど、全く上手くいかなかった。方法論は変えたつもりだったけど、本質的なところで上手くいかなかったです。
野澤 :どんな名プロデューサーだったとしても、ヒットの確率は3割ぐらいと言ってますよね。
吉田 :あのルーカスだって、自分のヒットは10%ぐらいだって言っているんだから。僕はおそらく、生涯打率で言うと、2割5分弱だと思う。ルーカスよりだいぶ甘いですが(笑)。
野澤 :野球の打率と同じで、3割行ったら天才みたいな。
【キーワード1-⑥:自分のアンテナと時代のアンテナがリンクしてヒットが連発する時期が存在する】
吉田 :3割いったら天才だし、そう簡単には行かない。「エンタの神様」などをやっている五味一男さんは、一時期雑誌などで絶対当てるとおっしゃっていましたが、あの方でも生涯打率はどうでしょうか。
僕もチェッカーズをやっていた時は何でも当たった。自分のアンテナと時代のアンテナがリンクしていたんでしょうね。全盛期の小室哲哉さんなんかもそう、全部当たる。あの短い時間に、時代と自分のアンテナがリンクしていた。時代が本当に読めたし、自分が感じるまま、イエスの方で当たった。そういう人がいた場合は、何も言わずその人にさせておけば正しいプロデュースというわけです。だって当たるのだから、あなたの言う通り、っていうのが正しいプロデュースですよ。
稲葉 :ゼロリセットして関係性が上手くいっているから?
吉田 :それもあるし、その時はある意味パラノイア状態なんですね。凄く時代の感覚とリンクしているから、神が降りるじゃないけど、理屈じゃないんですね。
稲葉 :萩元晴彦さんという、大阪万博や長野冬季五輪の一部を手がけたプロデューサーだったと思いますが、その方が「プロデューサーを1人決めて、言葉は悪いけど、キチガイになるくらいまでとことんやらせなきゃダメだ」って言っていました。
吉田 :人間のエネルギー、能力が本当に凄いものを出す時がある。そういう時は人間は物凄いエネルギーを発するんですね。チェッカーズの当時は本当に寝ていない。寝る時間がないから、ナチュラルハイ状態なんです。ちょっとでもじっとしていたらすぐ寝るぐらいに寝ていない。そういう意味では本当に異常な状態でした。
稲葉 :凄いエネルギーが出ているというのは、そういう環境をご自身で作った?
吉田 :作ったというか、売れっ子のディレクターは自然とそうなっちゃうんですよ。やらなきゃいけない仕事が山ほどあって、しかも昔はシングル曲は3ヶ月ローテーションと言われて、3ヵ月後に新しい物を作らなきゃいけないんですよ。ある種のゼロリセットをやりながら、流れも考えながらなんで、頭が本当に爆発しちゃう。それをあの頃のヒットディレクターたちはみなやり続けていた。今は全然違うかもしれないけど、僕らの当時の音楽ディレクターとかプロデューサーはそういうことをやっていたんです。過酷ですね。
稲葉 :ポニーキャニオンさんがそういう環境を作ったんでしょうか?。今だったら労働基準法とか言われるところを、整えた。
吉田 :全然整えていないですよ。死人が出て当たり前ですよ。まさに、それこそ死人も出たし。まあ異常な状態といってもいいでしょうね。普通の仕事じゃないと言えば普通じゃないですね。
稲葉 :覚悟を決めなきゃいけないところがある?
吉田 :僕も当時若かったから、とにかく面白いからやれていた。世の中、自分の感じた通りになるし、面白いに決まっているわけです。寝ている場合じゃないと。29歳の年に日本で一番レコードを売ったディレクターになったし、25~30歳ぐらいの6年間は、本当にほぼやれば当たるみたいな世界でした。自分なりにも大変な時間だったけど、やっぱり面白かったのでやってられたんですね。
<続く>
※この対談は、NECのビジネス情報サイト「Wisdom」のブログ「ビジネスにおけるキャラクター活用」で掲載した内容を、了承の上で再掲載したものです。




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