NECが運営するビジネス情報サイト「Wisdom」にて
Wisdomブログ「明日のビジネスを創りたい人へ ビジネスにおけるキャラクター活用」
対談シリーズとして掲載されているインタビュー内容です。
インタビュアーは野澤智行さん、他です。
1.ヒットコンテンツの共通法則
1)ヒットコンテンツを手がけて得られた発見 -チェッカーズのキャラクター戦略-(続き)
吉田 :チェッカーズをデビューさせるにあたって、まず彼らのビジュアルを何とかしないといけない、と考えました。何故かというと、アマチュア時代のスタイルではシャネルズの弟版にしか映らないからですし、当時売れていた横浜銀蝿はあんな不良の感じで、シブガキ隊はアイドル、ある意味アイドルとロックを、良い感じで違う次元で融合させるようにしたいなと。同じ次元だったらダメなので、違う次元で、と思ったわけです。
その時にお手本として僕らが考えていたイメージは、ドゥーワップは基本的にアメリカベースだから、シャネルズは顔を黒く塗って黒人を意識した感じなので、その反対となるのは、当時出てきたニューウェーブという音楽で、ハイセンス、イギリス、という方向性だった。
よくチェッカーズはベイシティローラーズと比較されるけど、僕らは全くそういった意識がなくて、単純にイギリス路線なのでイギリス的なビジュアルということを意識した時に、たまたまそうなっただけです。バンド名がチェッカーズという名前だったので、だったら印象をつけるためにはチェックがいいだろうと。それで現代風にアレンジしたチェックのビジュアルを作ったんです。
野澤 :(メジャーデビュー前から)そもそもチェッカーズの名があったんですね。
稲葉 :名があって、あとから体を合わせていった?
吉田 :そうです。今の流れに乗りながらも、今流行っているものと違う次元に持っていく、というのがチェッカーズに課せられたテーマだと思っていました。当然僕一人じゃ出来ないので、チェッカーズを一つの商品として見た時に、違う次元に持っていくため、色んなクリエイターたちに参加してもらったんです。
『ヒット学─コンテンツ・ビジネスに学ぶ6つのヒット法則』(ダイヤモンド社サイトのURLはこちら)の中にも一部載せていますが、秋山道男さん達をスタッフにつけるために、一番最初の企画書「チェッカーズ コンセプト」を作りました。
当時、ヤマハは大ヒットを連発していた巨大プロダクションで、楽器もあるヤマハ本体はキャニオンレコードなんかより全然大きい会社でした。そんな会社に、アーティストをこうしたいという企画書を持っていったレコード会社の人間はそれまで誰もいなかったらしいです(笑)。
企画書には、ダンサブルとか書いてあって。今でこそ、ジャパニーズポップスは皆ダンスポップスになっていますが、チェッカーズの一番最初のコンセプトは、歌って踊れるアイドル、ビジュアルアイドルのイメージだった。レコードとかを出すのをやめて、当時の新しいメディアだったビデオから出そう、というような企画イメージでした。
吉田 :横浜銀蝿とシブガキ隊のど真ん中で、新しいコンセプト、新しさを演出する。そんなことを書いた企画書をいろんな人たちに見せて、こんなことをやりたいので具体化してくれないか、とお願いした一人が秋山道男さんでした。秋山さんはチェッカーズを一つのキャラクター商品であるかのように、生きている7人の若者をキャラクター商品化した。その時のイメージが、センスのあるイギリステイストのものでした。
更に音楽プロデュースをお願いしたのが芹澤廣明さんです。昔、「ワカとヒロ」というアイドルもやっていて、当時は中森明菜の「1/2の神話」をヒットさせたぐらいの時で、新進気鋭の作曲家でした。ヒロさんは、ご多分に漏れず、昔不良のバンドマン上がり。だから、チェッカーズという、今の不良の九州の若者バンドマンたちを、音楽的にもちゃんと教育するには兄貴じゃないとダメじゃないかと。一緒にやっていたヤマハのディレクターが、ヒロさんという人がいるから彼らに監督をつけようということで、ヒロさんに参加してもらったんです。
ところがヤマハとかヒロさんという純粋な音楽の人と、秋山道男さんが全く合わない。ヤマハは日本の芸能界で売れていて、しかも物凄い成功体験を持っているので自信もあるし、「俺たちに任せろ」状態なんです。ところが僕が持ってきた秋山道男さんの一派は「これじゃダサい。」という感じで。それを合わせなきゃいけないのが、僕の最大のプロデュースでしたね。
【キーワード1-④:ミスマッチなコラボレーションを成立させ続けるのが、プロデューサーに求められること】
吉田 :僕が実例から見出した『6つのヒット法則』(下表参照)の法則1に、「ミスマッチのコラボレーションがヒットを生む」というのがあります。まさにチェッカーズの成功は、本当にミスマッチなものを強引にコラボレーションさせた結果です。それが最大のポイントだと思います。
生身のバンド、生身の人間をキャラクター化させて、それを実現するために、現状のサクセスストーリーやノウハウと全然違う強力な異次元の力を無理やり一緒に共存させたんです。
稲葉 :無理やり、強引とおっしゃっているけど、そういうきっかけがないと融合しないですよね。
吉田 :熱い鉄鍋に氷と熱油を同時に投げ入れて、バーンと爆発した時が大ヒットするんです。同時じゃなかったり、一方だけのエネルギーが大きかったりすると、必ず上手くいかないものです。両方とも強くて同時じゃないと無理。これが、20年やってきたプロデュースの結論です。両方とも強くて同じぐらいの強いエネルギーじゃないとダメですね。
野澤 :それぐらいパワーがないと、どこかで見たような、当たり前のものにしかならない、ってことですね。先程のケースだと、ヤマハに皆いっちゃいますよね。
吉田 :普通は皆そうです。キャニオンとヤマハの関係は、それまでは制作はヤマハ主導でキャニオンはお手伝いする、という感じだったんです。ところがチェッカーズのケースでは、その関係を変えたということで、これはヤマハの歴史始まって以来のことだったみたいです。勿論、僕の知らないところで上司とか大人たちがさまざまな調整をしていたんでしょうね。
野澤 :ちょくちょくある話でもなさそうですよね。
吉田 :そんな大変なことは普通はまずしないし、あの時僕も若かったんでしょうね。しかも成功しないとそれはぶっちぎれない。逆説的に言うと成功したからできたとも言えますね。
稲葉 :例えばキャラクターの話でいうと、生身の人間じゃなかったとしても、原作者がいたり、乗るコンテンツが上手く乗らないとやっぱり同じような苦労がある。お互いが水と油だったとき、吉田さんみたいなプロデューサーが強引でも無理やりやらないと、キャラクターがヒットするきっかけが生まれないんでしょうね。
<続く>
※この対談は、NECのビジネス情報サイト「Wisdom」のブログ「ビジネスにおけるキャラクター活用」で掲載した内容を、了承の上で再掲載したものです。




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